2017年05月10日

菅野完『日本会議の研究』扶桑社新書 八〇〇円+税

菅野完『日本会議の研究』扶桑社新書 八〇〇円+税


 この本が出たとき、あたしはいつものようにネットの量販店で買おうとしたのね。そうしたらなんと二九九九円とかいうお値段がついてたのね。定価八〇〇円の新書ですよぉ~。ありえないお値段でしょ。それというのも、この本が売れている、品切れだ、印刷が追いつかない、みたいなことが新聞だったか、テレビだったかで騒いでいたから、ほれ、この書評欄のこともあるでしょ。すぐに注文しようとしたらまさに品薄状態だったのね。二九九九円といえばほぼ三〇〇〇円よ、足下を見られたってこういう感じね。にしてもよ、新書本でこの値段、それはないでしょ。
 でもね、SNSのお友だちでマジでその値段で買った人がいたわ。
「その値段でお買いになったの?」ってお聞きしたら、
「情報はスピードが命です。値段には代えられません」
ですって。
 あたしは、一呼吸おいて別のネット通販で見つけた。二週間くらいかかったけれど、定価で買えたわ。
 こんな前置き長々と書いたのはそれだけ社会現象だったからよ。社会現象になったのはそれだけ多くの人がこの組織について知りたかったからなのね。この組織、そう日本会議よ。
 この本が出てから選挙があって安倍内閣が再び再編成して発足したけど、また日本会議のメンバーが増えたっていうことじゃない。安倍首相はじめ、閣僚の大半と言ってもいいくらいの人が日本会議国会議員懇談会のメンバーなのね。それだけじゃない。民進党、維新なんたらの野党にもメンバーがいるというすごい組織ね。
 ということはこの日本会議が事実上日本の政治、というより、このところ右傾化していると言われる日本の社会を動かしていると言ってもいいわけよ。そのわりにこの日本会議を誰が作ったどういう組織なのか、誰も知らないのよね。
「気づかなかった」
「怪しい」
「名前からして公的な組織かなあ」
「右翼団体かも」
「政党ではないだろうし」とかなんとか…
 邪推と憶測だけは広まっていたようなんだけど、実体はよくわからない。ただ、保守派というより安倍政権に浸食している右寄りの組織だということだけは想像がつくでしょ。
 で、この本が出たとたん、日本会議は発行元の扶桑社に出版停止の要求を申し入れたのね。国家権力に近い組織が民間企業に恫喝まがい(出版停止ってそういうことよね)の申し入れをするって、最近多いような気がするのはあたしだけかしら。で、おもしろいことにこの扶桑社はご存知のようにフジ・産経グループの「右」系の出版社で例の「つくる会」の教科書なんかも出していた会社なのね。それもあって世間の卑俗な興味を煽って市場価格が暴騰したということかな。
 ねっ、それだけで読んでみたくなるよね。腰巻き(本に巻いてある帯のことをそう呼ぶ)の表には
 「右傾化」の
     淵源は
  どこなのか?
 「日本会議」
    とは
  何なのか?
 と大文字のコピーが目を引く
 裏側には
  市民運動が嘲笑の対象にさえなった
  80年代以降の日本で、
  めげずに、愚直に、地道に、
  そして極めて民主的な、
  市民運動の王道を歩んできた
  「一群の人々」によって
  日本の民主主義は
  殺されるだろう―
と、挑発的で謎めいたキャッチコピーに惹かれないわけがない。
 で、読んでみるとこれが面白い。まるで推理小説を読んでいくような
 ネタバレになるから慎重に書くよ。なんせ推理小説みたいなんだから。
 まずは日本会議とは何かを概述したあと、歴史をざざっと遡る。遡っていくとあの一九六〇年代後半の学生運動に行き着くのよ。しかも、その種子は九州で芽を吹いているんだから、驚きでしょ。そして「元号法制化運動」を始めたのが日本会議の原点らしいのね。それ以上は教えない。だってとてもスリリングな謎解きなんだから。
 それから日本会議の戦略が語られる。それもさっきのキャッチコピーにあったように、愚直で地道で、極めて民主的で、まさしく市民運動の王道を歩むやり方で憲法改正が可能なところまで世の中を動かし、ケント・ギルバートや百田尚樹といったタレントを動かして運動を盛り上げていく段取りが描かれていく。まさに市民運動の王道であり、言い換えれば草の根のファシズムそのものだと言えるのかもね。この手法は、反対の立場の人たちも学ぶべきよ。その意味では社会運動の教科書みたいに読んでもいいのかもしれないわね。
 そして腰巻きの裏に書いてあった「一群の人々」について語られる。これは最終的な謎、つまりこの日本会議の運動を生み出した「淵源」は誰かという謎を解き明かしていくの。
 ここは日本会議が潰したかった部分なのね、きっと。ここには五〇年の現代史の底に流れていた人間の怨念というか、情念というか、まあ、読んでみて。下手な小説以上に面白いし、日本会議が出版停止を申し入れたのもさもありなん、ね。

☆☆☆☆ 今、この国がどこに向かっているのか。そしてそれを動かしている「一群の人々」とは何者であり、何が狙いか。安倍晋三はただのあやつり人形にすぎない、のよ。
posted by ウィンズ at 15:33| 福岡 ☁| Comment(0) | 戦争と平和 | 更新情報をチェックする
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