2013年09月03日

辻太一朗『なぜ日本の大学生は、世界でいちばん勉強しないのか?』東洋経済新報社 一五〇〇円+税

 すごいタイトルの本だ。PISAの学力がどうだとか、全国学力調査がどうだとか言っている人たちのまぬけさがおかしい。
 昔から日本の大学生というのは勉強しないと言われてきた。レジャーランドだと笑われてきたこともあった。しかし、それは誰もが大学に行くわけではない時代に大学に行くことのできた連中に対するいささかやっかみをふくんだ批判であったのかもしれない。ところが現在では大学に入りたくもない若者まで、大学に入ってくる。そうすると、大学にはそれまでの大学の伝統的な理屈は通らなくなってくる。どっとあふれてくるのは初等中等教育の時代に培った物の考え方であり、学び方であり、生き方なのだ。そしてそういう暮らしの知恵が大学での勉強のしかたになって現れてくるというものでないかい、ってか。
 この本の問題意識は海外の大学生は優秀であり、日本の大学生は見劣りがするということであり、かつ日本の大学生は小学生よりも勉強していないということのようだ。
 なにゆえに日本の大学生は勉強しないのか。それは本書によれば負のスパイラルなるものに支配されているからだというのだ。その負のスパイラルというのは就職試験を受ける学生の態度となってあらわれている。つまり、左のようなものだ。

企業 学生は勉強してないからバイトやサークルの話を聞くしかない
学生 就活で勉強のことは訊かれないから、バイトやサークルの話をする。
大学 しっかり教育しようとすると学生は離れていく。だから適当にやる。
学生 教員にやる気がないから、バイトやサークルに精を出す。
企業 学生は勉強してないからバイトやサークルの話を聞くしかない。
学生 就活で・・・・

 こんな具合にどんどん学生は勉強しない方に、まわっていく。現在の大学の実状ではこのスパイラルから抜けられない、というのだ。著者はこの負のスパイラルから抜け出すにはこの負のスパイラルを正のスパイラルに変えることだと言い、正のスパイラルに転換する方法を提言しているんだ。つまりは「考える力」を育成する授業を大学教育でやるように、ということだ。
 だけどさ、そんなふうに大学が努力して授業改革をしたとしてもさ、学生の学びの価値観が変わらなければやっぱり負のスパイラルは変わらないんだと思うんだな。それってさ、試験の点数にしか価値の見出せないような教育を取り巻くしくみが問題なんだろうと思うよ。
 このスパイラルはやはり「学生は勉強してるから……」で始まるのがいい。正のスパイラルだな。ならば小学校、中学校のときから学ぶことの楽しさを伝えておくべきだし、高校が潰してはならない。受験産業の言い分に振り回されるのもおかしい。「子どもたちは勉強に興味があって…」という、そういう教育の基礎があって始めて成立することだ。大学ではもう遅いのかもしれない。なにしろ、大学に入るや、もう勉強しない方向に向かっているんだから。


☆☆☆ とか言ってもさ、教師の学習意欲がいちばん問題なんだけどね。この読者はだいじょうぶだとは思うけど。
posted by ウィンズ at 19:22| 福岡 ☔| Comment(0) | 教育及び教育問題 | 更新情報をチェックする
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