2013年09月03日

前泊博盛『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』創元社 一五〇〇円+税

 民主党から自民党に政権が戻って、安倍さんが首相に再任されて、なんだかんだで半年が過ぎた。ところで安倍さんて「憲法を改正したい!」って言ってた人で、前に総理大臣をしたときにはその前哨戦として教育基本法を改定してくれた人だったな。以前から〈戦後レジームからの脱却〉と言い続けてきて、それが憲法改正という目標らしいんだな。
 で、〈戦後レジームからの脱却〉って何なんだろう。安倍さんに言わせれば「戦後レジームからの脱却を成し遂げるためには憲法改正が不可欠」(安倍晋三ホームページ二〇一三・六・一 http://www.s-abe.or.jp/policy/consutitution_policy)なんだそうで、それで安倍さんは憲法改正に向けて躍起になっているっちゅうわけなんだな。確かに戦争に負けて日本はしばらくアメリカの占領下にあったわけで、その間に現在の憲法が作られ、〈戦後〉と言われる日本の体制が構築された。その戦後体制を〈戦後レジーム〉と呼ぶそうで、その〈戦後レジーム〉が今も続いているというのが安倍さんの認識らしいし、その象徴が日本国憲法のようなのだ。
 そう言えば、去る四月二十八日のことだけど、政府は「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」を開催した。一方で、沖縄では「政府式典に抗議する『屈辱の日』沖縄大会」を開催したんだな。なぜならば、沖縄はまだ〈主権回復〉からほど遠い状況にあるし、あの昭和二十七年四月二十八日は「独立」日本から切り離されて、アメリカの信託統治領になった〈屈辱の日〉と感じている。だから、4・28というのはずっと「沖縄デー」と呼ばれてきたんだな。
 マジメに考えれば、つまり(戦争と)戦後の痛みを感じているところから考えれば、〈戦後レジームからの脱却〉というのは沖縄の屈辱を晴らすことではないんだろうか。そう言えば、沖縄では米軍の犯罪が起きたというので、米軍が禁酒令を出したそうで、そのおかげで沖縄の飲食店は大ダメージを受けているという。そういう絶対矛盾がまさに沖縄における〈戦後レジーム〉なんだ。それを黙殺して「主権回復・・・記念式典」なんて能天気なことを言うのは肝心の部分を見過ごしているか、意図的に国民の眼を逸らしているのか、どっちかしかないと思うんだが。
 そして、ほとんどの国民はそれが沖縄だけの問題だと思っているだけじゃないのか。実はたまたま沖縄というところが米軍にとって都合がいいからだけであって、実は日本全体が沖縄と同じなんだね。日本という国はどんな国なのか。それは日本国憲法が定めている。しかし、日本国憲法以上に日本という国のあり方を「法的」に決めているものがあるのだ。それが「日米地位協定」というものなのだ、というのがこの本の示している内容だ。
 と、むずかしいことを書いたところで、「それでも日本は平和だ」なんてほざいている人たちに訊きたい。
「なんで米軍が日本のあちこちにいるんだ?」
「なんで鳩山さんは基地を動かせなかったの?」
「しかも、何で失脚しちゃったの?」
「なんで福島があんなになったのに、原発をやめられないんだ?」
「なんでTPPに参加しなくちゃいけないんだ?」
 いずれも昨今の政治的ギモンなんだし、日本を愛している人ならばみんな聞きたいことだろう。それに対して、それなりにもっともらしい答えを言う人はいるだろう?でも、それって、本当に日本の国益に立っての意見かな。
 「中国や韓国に屈したり、左翼勢力に与したくないから・・・・」なんていう消極的親米派もいるのかもしれない。でもそれってこの国のことではなくてアメリカの利益を第一に考えた発想だよね。
 しかし、日本とアメリカが植民地と宗主国の関係だとすれば、すべてが氷解する。そして『日米地位協定』にはそのことが書いてあるのだ。だから本書には「本当は憲法より大切な」と修飾語がついているのだ。
 素朴なギモンに対するQ&Aが本書の中心になっている。だからわかりやすい。それを読んでいくだけで問題が氷解するだけではなく、この売国的な約束事を作った人たち、この屈辱的なルールの下でぬくぬくと権力者面(づら)している人たち、さらにこんな反日的なルールも知らずにアメリカに媚びを売って自分を愛国者だとかんちがいしている人たちが情けなくなってくる。そして憲法を変えてさらにアメリカのポチになろうという〈戦後レジームからの脱却〉なんて話を逸らしている政治勢力にも腹が立ってくる。
 そんなわけで、何も知らずに、いやいつ自分たちに同じ問題が降りかかってもおかしくないことを知らずに、厄介なことを沖縄に押し付けて知らん顔を決め込んでいるこの国の住人たちにこの一冊を読んでもらいたいし、あっちの同類にはなってもらいたくないな。


☆☆☆☆ 橋下さんがどうして「アメリカ出ていけ!」と言わずに、風俗がどうのこうのと莫迦なことをほざいて恥をかいた理由もよくわかる。鳩山さんが失脚して、安倍さんが二度目の登板になった理由もよくわかる。
 
posted by ウィンズ at 19:21| 福岡 ☔| Comment(0) | 戦争と平和 | 更新情報をチェックする
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