2013年09月03日

ジェームズ・クラベル著 青島幸男訳『23分間の奇跡』集英社文庫

 教師だったら、「自分の思いを子どもに伝えたい」とか、「子どもに正しい生き方を伝えたい」とか、「人権を大切にする子どもを育てたい」とか、「平和を愛する子どもを育てたい」とか、「立派な市民に育てたい」とか、思うよね。あたいも子どもを教育するってなんか自分の理想とする価値観に子どもを近づけることだと思ってたよね。ていうか、今でも思っているのかもしんない。
 なんせ、センセイのいうことを聞かない生徒なんて、どっちかというと苦手だし、まあ、本音を言えば嫌いかな。だけどセンセイのいうことを聞かない生徒は山ほどいるし、センセイのいうことを聞かずに転落した人生を送っている子や、苦労している子や、ネット右翼になっちまった子もいる。あ~あ、なんとかならないかなあ、と思う今日この頃なのよね。
 そしたら「こんな本があるよ」って、お友だちが教えてくれた。それがこれ。単行本で出たのが一九八三年、集英社文庫になったのが一九八八年だから、もう三〇年近く前に出た本なんだわ。しかも、青島幸男訳っていうのがいけてるでしょ。
 それでね、どんな話かっていうと、ジョニーという少年がいる教室に若くてきれいな先生がやってくるところから始まる。それまでの先生は教室から出され、この若い先生がジョニーたちの新しい先生になったのだ。この舞台となった学校がどこの国なのか、いつのことなのか、そんなことは何にも書いていない。ただ、新しい先生は戦争が終わって、「海の向こうの見知らぬ国からきた」人たちの一人だということだ。
 たぶん、ジョニーの国は戦争のあと外国の支配下に入ったのだろうということだけが推測できる。かつての朝鮮かもしれないし、フランスかもしれないし、戦後の日本かもしれない。だから新しい先生にジョニーたちはちょっとした不安と反発する気持ちを持っているわけだ。
 そして新しい先生の授業が始まるの。この授業がすごい。不安と反発に満ちている子どもたちの気持ちをほぐし、受けとめていく。自由を与え、権利を与えていく。そして最後まで反感を持っていたジョニーまでが、ついに
「これからは、先生のいうことをよくきいて、いっしょうけんめいべんきょうするぞ」
 と「けっしんした」のだ。
 そして新しい先生が子どもたちすべての気持ちをつかみ、「りっぱな市民として育っていくだろう」と確信するまでの時間が23分だったという、そういう23分間の間に占領された国の子どもたちが先生を信奉してしまうという奇跡のお話なのだ。
 すばらしい授業は生徒の心を掴み、子どもたちを変えていく。そのことはすばらしいことなのかもしれない。しかし、それは言い方を変えれば洗脳なのかもしれない。ともかくこの若い先生のワザには脱帽すると同時にちょっと怖くなってしまいましたとさ。


☆☆☆☆ いい授業をしたいと願っている人、子どもたちに自分の思いを伝えたくてたまらない人なんかにおすすめ。
 学級崩壊で疲れ果てている人、学校が荒れて絶望している人、生徒が言うことを聞かなくて困っている人なんかにもおすすめ。
 でも、なんてったって、平和教育や人権・同和教育で子どもを変えたいと思っている人には絶対におすすめ。そして子どもを自由に操りたい人には必読の書だね。 
posted by ウィンズ at 19:17| 福岡 ☔| Comment(0) | 教育及び教育問題 | 更新情報をチェックする
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