2009年10月03日

新谷恭明『学校は軍隊に似ている 学校文化史のささやき』(社)福岡県人権研究所発行、海鳥社発売 一二〇〇円+税

 『ウィンズ』の読者のみなさんには学校の教員が多いだろうと思うし、中学やら高校のセンセイなら歴史を教えている人も多いだろう。そういう方々には釈迦に説法みたいなものだが、歴史というのはどういう教科なんだろうか。まさか入試のための暗記科目なんて思っている人はいないだろうね。まさか歴史なんてなんの役にもたたないものだ、と言う人はいないだろうね。もし、そういうふうにしか歴史について語れない人が近くにいたら是非この本を薦めてほしい。どうしてって?どうしても、さ。
 本書は「学校が病んでいるとおもえる現象があとをたたない」という書き出しで始まる。「学校が病んでいる」、それは現在の学校のあり方に対する一つの問題意識であろう。役に立たないと思われている歴史に何ができるか。ある意味で本書は現在の学校に歴史という刀で喧嘩を売っているのかもしれない。
 著者によれば現在の学校は生活習慣病を患っているのだと言う。そしてその生活習慣とは学校文化といわれるものであり、本書はそうした生活習慣を治療(学校改善・改革)の参考のために記したものだという。そう言われれば身に思い当たることのあるばいね。
 まずは「学校は軍隊に似ている」というタイトルに惹かれた。そう言えば学校では「規律、礼!」なんていうモロ軍隊みたいな慣行があるし、部活の上下関係とか教員の怒鳴り方とか、軍隊に似たところはいっぱいあるような気がする。しかし、そういう表向きのところだけが軍隊に似ているのだろうか。命令口調をやめたら子どもたちがタメ口をきいてきて収拾がつかなくなった、なんて話もよく聞く。それって軍隊だったら反乱なんだろうな。
 で、頁を繰ってみるとそんな話は最初のいくつかで、あとは学校の中にある(あった)いろんなできごと、しきたりなんかについて歴史的に説明されている。語り口の軽妙さにのせられてついつい読み進めていくと、すっごく重たい問題にもぶちあたってしまう。そういう魅力を持った本だ。例えば「蛍の光」という歌があるよね。卒業式によく唄う歌なんだけど、その四番とかがあるのを初めて知ったけど、なんちゅう恐ろしい歌なんだろうと思ったな。それから殉職というのも知って気づいたんだけれど、死んだ本人の意思とは別に人間の死っていうのはいろんな人、殊に権力者によって利用されてしまうものなんだな、とか感じちゃってうかつに死ねなくなったし、最近はやりの二学期制も四月に学年が始まる限りなじむのは無理なんだってこともわかった。そういうふうに読んでいくと歴史というのは暗記教科だって決めつけるのではなくってもっと深い教科になるものだってことがよくわかる。読んだそばから歴史の授業案を書き換えなくっちゃって思ったね。
 で、どこかで読んだことがあるなって思ったら、本書は県同教の機関誌『かいほう』の最後の頁に載ってる「羅針盤」というコーナーに書いた文に加筆してまとめたんだと。そういえば「羅針盤」はけっこうおもしろくて毎回楽しみにはしていたけれど、現物はどっかになくなってしまったりして、読み返したくても読み返せないし、今回出版にあたってはずいぶん文章も書き換えているみたいなのだ。そしてまとめて読んでみると「羅針盤」のおもしろさが倍増してやってくるという感じがする。

★★★★ まさに目から鱗の二十五章。学校文化を考える宝石箱みたいな珠玉の一冊。読まないで学校について語れまい。ところで、厚さの割に高いのか、それとも濃いのか。それは問題だ。あちきは濃いほうに百点!



こちらからも買えます。
posted by ウィンズ at 14:37| 福岡 ☁| Comment(0) | 教育史及び教育学 | 更新情報をチェックする
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